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【オリコン訴訟 判決批判2】オリコンが明言した「殺意」を無視する異常な判決

■ 損害額が五十分の一に減額されても「妥当」?

 東京地裁・綿引穣判決に対して、オリコンが次のようなコメントを発表している。

  ……〔略〕……このような判断が示されたことを、きわめて妥当なことと考えております。
   ● 訴訟の判決に関するお知らせ ( 2008-04-22 )
 
 誠に奇妙なコメントである。
 なぜ、「妥当」なのか。納得いかない判決ではないのか。損害額が五十分の一に減額されているのである。
 オリコンは、損害賠償として五千万円を請求していた。それにも関わらず、損害額が百万円しか認められなかった。
 普通に考えれば、オリコンは不服なはずである。
 だから、普通ならば、次のようなコメントを出すはずである。 
  ……。しかし、損害額が正当に評価されなかったのは残念である。
 
 それなのに、オリコンは「きわめて妥当なこと」と言う。
 なぜ、「妥当」なのだろうか。
 実際には、五千万円の損害を被っていないからであろう。五千万円の損害を被っていたら「妥当」などとは言っていられない。悔しい気持ちになるはずである。


■ 〈損害賠償目的〉ではなく〈言論抑制目的〉だから、五十分の一でもいいんだ

 オリコンは、判決で損害額を五十分の一に減額されても「妥当」と言う。誠に奇妙である。 

 百万円で「妥当」ならば、最初から百万円の損害賠償を求めればよかったのだ。
 
 オリコンは、百万円で「妥当」なのに、五千万円の損害賠償を求めた。つまり、そのような金銭的被害を受けていないのに、高額訴訟を提起したのである。(注1)
 現に、訴訟を提起した理由をオリコン社長・小池恒氏は次のように言っていた。 
 我々の真意はお金ではありません。……〔略〕……烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます。
  ● 「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について
 
 また、『J-CAST ニュース』において、オリコンのIR担当者は次のように言う。 
 賠償金が欲しいというのではなく、これ以上の事実誤認の情報が流れないように(多額の賠償金を課すことで)抑制力を発揮させたい
  ● 雑誌にコメントしたライター 5,000万円賠償請求される
 
 オリコンは自ら〈「お金」・「賠償金」が目的ではない〉という趣旨を述べていた。〈「抑制力を発揮」させることが目的である〉とういう趣旨を述べていた。
 この事実を踏まえれば、賠償金が百万円でもオリコンが満足である理由がわかる。もともと、〈損害賠償目的〉ではなく〈言論抑制目的〉の訴訟だったのである。SLAPP(恫喝訴訟)だったのである。だから、オリコンは賠償金がいくら減額されようとかまわない。〈言論抑制〉が達成できればいいのである。


■ 〈言論抑制目的〉のオリコンの訴訟を綿引穣裁判長はどう判断したか

 つまり、オリコンは、本来の目的ではない目的で裁判所を利用しているのである。
 損害賠償を求めるのは、損害が発生しているからである。損害が無いのに、損害賠償を求めるのは裁判制度の濫用である。別の目的で訴訟を起こすことは裁判制度の濫用である。
 言い換えれば、裁判所はなめられているのである。
 このようなオリコンの言動に対して東京地裁・綿引穣裁判長はどのような判断を下しているか。 

 ……〔略〕…… 一般に、名誉毀損訴訟においては、被害額が高額に設定されるのが通常であって、請求額と容認額との間にかなりの差が生じることも稀ではない。したがって、原告が5000万円の損害賠償を求めていることをもって、本訴の提起を違法と評価することはできない。(注2)
 〔東京地裁判決 41ページ〕
 
 分かり易く言い換えてみよう。 
 名誉毀損訴訟では、ふっかけるのが当たり前なんだよ。
 だから、ふっかけてもいいんだよ。
 
 目も醒めるような暴論である。(注3)
 それでは、具体的に問おう。「一般に」高額訴訟を起こす者が、自ら〈「お金」・「賠償金」が目的ではない〉と述べたりするのか。〈「抑制力を発揮」させることが目的である〉と述べたりするのか。
 そんなことはない。
 高額訴訟を起こす者は、多くの場合、実際に高額の損害が発生したと信じているのである。また、そうではない場合も、対外的にはそう信じているふりをするのである。
 オリコンはどちらでもない。「腹黒い」意図を隠しもしないのである。
 オリコンは「腹黒い」意図を明言した特殊な企業である。(さらに、今回も、判決に対して「妥当なこと」とコメントして、〈言論抑制目的〉であったことを示してしまった。)
 
 
■ オリコンの「腹黒い」意図を全く検討しない綿引穣判決

 オリコンは特殊な企業なのである。〈言論抑制目的〉で訴訟を起こしたと明言する特殊な企業なのである。
 しかし、綿引穣裁判長の判決文には、この事実の検討が一切無い。綿引穣裁判長は〈言論抑制目的〉で損害賠償訴訟を起こすことを認めるのか。本来の目的外での訴訟を認めるのか。裁判所をなめたオリコンの言動を認めるのか。
 この事実は、既に烏賀陽弘道氏の弁護団が指摘している。当然、綿引裁判長は知っていたはずである。
 それにも関わらず、綿引穣判決にはこの事実の検討が全くない。 

 オリコン自身が〈言論抑制目的〉という意図を明言した事実がある。
 しかし、判決文では、この事実の検討が全くなされていない。
 
 誠に不思議である。
 なぜ、この事実に一言も触れずに判決文が書けるのか。
 この裁判の中心的争点は次のものである。 
 オリコンの行為はSLAPP(恫喝訴訟)か。
 裁判制度を〈言論封殺目的〉で濫用することを認めるのか。
 
 オリコンが「腹黒い」意図を明言している事実は、この中心的争点を検討するために必要不可欠である。
 しかし、綿引穣裁判長は、この事実を一切検討していない。


■ 「ぶっ殺そうと思った」と明言しても無罪?

 喩えれば次のような状態である。 

 金属バットで人を殴り殺した者が逮捕された。
 容疑者自身が次のように証言した。
 
 「ああ、ぶっ殺そうと思ったんだよ。」
 
 しかし、裁判長は無罪を言いわたす。判決文には次のようにある。
 
 「一般に、金属バットは振り回すものである。したがって、金属バットを振り回したことをもって、本件を違法と評価することはできない。」
 
 もし、このような判決を出したら、その裁判長は正気ではないと評価されるであろう。
 人に向かって金属バットを「振り回した」のである。また、本人が「ぶっ殺そうと思った」と証言したのである。「殺意」を明言しているのである。その事実を無視する判決は異常である。
 オリコン訴訟における綿引穣判決はこれと同じである。オリコンは「殺意」を明言しているのである。それを無視する判決は異常である。
 綿引穣裁判長は正気ではない。または、著しい能力不足である。
 法曹界は、このような異常な判決を認めるのであろうか。そうではないだろう。
 法曹界から、この異常な判決に厳しい批判が出ることを期待する。
 
                        諸野脇@ネット哲学者


(注1)

 まず、オリコンは、五千万円の損害が生じた証拠を全く示していない。
 『サイゾー』誌に載った一言のコメントで、どうして五千万円もの損害が発生するのだろうか。
 

(注2)

 この判決文は「一般に~。したがって~。」という形式である。
 綿引穣裁判長は、一般論をオリコンの場合に適用している。しかし、オリコンは、その一般論が適用できない特殊な例なのである。
 これは〈一般論過剰適用の虚偽〉である。
 この虚偽は次の文章で詳しく説明した。
 
  ● 東京地裁・綿引穣裁判長のSLAPP(恫喝訴訟)容認論の虚偽
 
 
(注3)

 オリコンは、一個人に対して五千万円もの高額損害賠償を求めた。「被害額が高額に設定される」こと自体が〈言論抑制〉効果を生む。この当たり前の原理が、綿引穣裁判長には分からないらしい。


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2008年06月15日 23:20に投稿されたエントリーのページです。

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